【書評78】「ヴィレッジ・ヴァンガード」で休日を

ヴィレッジ・ヴァンガード代表取締役 菊池敬一著

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夢と希望の創業記


情緒的なタイトルだが、小説ではない。


ヴィレッジ・ヴァンガード」とは、
現在全国に287店舗にも及ぶ本屋さん。

東京にも随分増えているが、
いわゆる「書店」ではないので馴染みのない方も多いかもしれない。

名古屋から起業し、そのユニークな業態が新しい書店モデルとして
創業以来、売上記録連続更新しているというから驚きだ。


「日本の本屋の景色を変えよう。本屋には夢も希望もある。」


著者紹介

菊池敬一(きくち けいいち)

ヴィレッジ・ヴァンガード代表取締役。
1948年北海道生まれ。
青山学院大学卒業。書店勤めを経て、39歳で独立。
名古屋で遊べる本屋「ヴィレッジ・ヴァンガード」を設立。
独自の定番リスト、POP、ディスプレイによるプレゼンで
唯一無二の書店としてその地位を確立。


「唯一無二」の店舗経営

「ヴィレッジ・ヴァンガード」は
現存するニューヨークのジャズクラブから採ったらしい。

とにかくジャズに関する名前にしたがったというのが、
創業者のこだわりだ。

ヴィレッジ・ヴァンガードのユニークさは
訪れてみないとなかなかお伝えしづらいのだが、

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※一番下はヴィレッジヴァンガードプロデュースのハンバーガーショップ


こんな感じ。。


いわゆるベストセラーをランキングにしてディスプレイしたり、
新刊を平積みにしている「普通の書店」を想像してはいけない。

とにかく店舗全体がエンターテイメントというか、
空間そものが楽しいのである。


今でこそ全国に287店を数え、
ジャスダックに上場も果たしたヴィレッジヴァンガードだが、
創業10年頃に書かれたこのエッセイに書かれている
菊池氏が掲げるモットーがいい。

「少ない在庫と少ない人員で、コンセプトを守り、節操を曲げず、
あまり多くないお客様を大事にし、ほどほどの売上をあげ、
書店員としての矜持を持ち、自分のライフスタイルを売り場に反映させ、
商品と商品にかかわる事務を愛し、生き生きと仕事をしよう」


どこまでが本心かわからない
自嘲気味でユーモア溢れる魅力的な文章表現。

でもその中に、創業者の頭の良さと、
仕事、というか、生き方そのものに対する
ゆるぎない彼の個性と信念を感じる
珍しいタイプの「経営書」だ。

見果てぬ夢ではあろうが、僕には夢がある。
浮いた金が一億くらいあって、商品を全て現金決裁することである。
当然、しゃらくさい請求書もない。
したがって、それをファイルする必要もない。
精神衛生上とてもいいことだ。

(中略)

何よりキッタハッタの感じがいい。髭はやして、ハンチング被って、
サングラスかけて、太い金の指輪。これで決まり。
儲けたら黒塀のある和風豪邸を建て、庭に錦鯉、応接間に刀剣、
虎の敷物、聞こえてくる広沢虎造。いいなぁ。
もっと儲けて売上が百億くらいになったら、店頭上場して持ち株会社を作り、
社名を「菊池組」にする。そこで最終目標の「君臨すれど統治せず」をやる。


創業の誓い


・・・と、最後までこんな調子で書かれた本だが、
創業当時を振り返った「あとがき」を読んだら涙が出た。

開店の準備をしている頃、女房と語り合ったことで今でも鮮明に
覚えていることがある。
「新刊やベストセラーに頼らず、
売りたいものをわかってくれる人だけに売ろう。
そのためのプレゼンテーションに、ない知恵を絞ろう。
売上げが悪くても明るく耐えよう。
やりたいことのために清貧に甘んじよう。
とりあえず、身を粉にして働こう。」

(中略)

売上を増やす方法は少なからずある。
僕らはそれについて、語り合い、喧嘩もした。
彼女は真面目に悩み、僕は相変わらず馬鹿なことを言い続けた。
堂々巡りの結論はいつも、
「せっかく作った夢のような空間を大事に育てていこう」だった。
そのたびに僕らは晴れ晴れとした気分になり、入魂の仕事をした。

(中略)

「本のあとがき」を書くような人生は想像しなかった。
書き忘れたままでいたいが、
毎週の拙文にさんざん文句を垂れてくれた女房に
いやいやながら感謝する。

翻って、私自身の仕事の仕方を考えた。

様々な業界で沢山の事業を立ち上げているうちに、
結局自分が何屋かわからなくなった。

プロダクトアウト(※1)ではなく、マーケットイン(※2)もどきの
思想ばかりが染み付いて、

「何をやれば儲かるかなぁ?」
「そんなことやっても儲からないよ」

毎日そんな議論ばかりしている自分がいる。

でも、一方で、
書店経営という、一般的には差別化がしづらく
若者の本離れが進んでいるとか、利益も薄いとか言われる業態でも
強い個性を打ち出して、大きく業績を伸ばす経営者がいる。

※1
プロダクトアウト・・・企業が商品開発・生産・販売活動を行う上で、
企業側の都合(論理や思想、感性・思い入れ、技術など)を優先するやり方。
"作ってから売り方を考える方法"といえる。
※2
マーケットイン・・・企業が商品開発・生産・販売活動を行う上で、
商品・サービスの購買者のニーズ優先し、ユーザー視点で商品開発を行い、
ユーザーが求めているものを求めている数量だけ提供していこうという
経営姿勢。"売れるものだけを作り提供する方法"といえる。


マーケットインがいいとか悪いかという話ではない。

中途半端なマーケット志向で、
売れないのを市場のせいにするくらいなら
好きなものを徹底的に売ることだけを考えて生きていたい。


お金や権力や名声はあくまで副産物に過ぎなくて、

ただ一つの、自分が好きなことをやり続ける人の強さ。


かつての私を元気づけてくれたもの

ちなみに、私は新卒のとき同期で一人名古屋赴任を命ぜられた。

夢に描いていた東京でのOL生活が一転、
友達も家族もいないその土地で、随分淋しかった思い出がある。


その頃週末によく通っていた郊外の本屋があった。


そこに行けば心がわくわくした。
他の書店とは明らかに違う品揃えの本と、
1人暮らしの部屋を明るくしてくれる可愛い雑貨を探しては、
よく買っていた。


名古屋にいたのは2年間だけで、
もう地名も書店名も全然覚えていなかったのだが、
この本を読んではっとした。


あれは多分、、


当時はまだ名古屋近辺にしか存在していなかった
ヴィレッジヴァンガードだったんだ。。

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